specimen works 1986-1989
collection F
encounterday:28.OCT.1984
specimen day:15.DEC.1986
私は満たされないままの私の熱狂をもてあます
ただ そこに在る
別れることのないプラスとマイナスのそれ
その微熱のような<気配>や<空気>が私を満たそうとする 私を満たす小さな対象
それらの内には 優しく指示をする地図が眠っている
私の想いと等価値な物質
私は眠る/私は触れる/私は与える
そこにあるものは 全て私という<反応体>の流した
感情によって 形づくられる優しい物質
私の加工/私の音符/私の発声
Die Kristalllbildungg
encounterday:23.NOV.1987
specimen day:18.DEC.1987
硬質な雨が降り続く時
私は あたたかな水をまきながら
<庭>の片すみを堀りかえす
そこには地図の上に置かれた無色の硝子球の歪んだ内像のように優しい
私の未結晶な粒子が眠っている
私の<視線>に触れて
粒子は ゆるやかな円環となり
<凝固>と<呼吸>の結晶作用を繰り返す
そして また やわらかな土に包まれて<庭>の北側に眠り続ける
私の粒子は いつでも
静かな熱狂を夢みて
あたたかな<大気>となって
すぐここに 在る
Der Hase
encounterday:26.JUL.1984
specimen day:18.MAR.1987
わたしは かつて3本足の馬をみつけた
わたしの手は確かに その硬質な背に触れた
けれど わたしはその4本めの足を切り取る術をもっていなかったわたしは彼を救うことができなかった
わたしの感傷はその時から
そこに留まった
わたしは知っている 彼の足は切り取られることなく
多くの残骸となくなってしまったことを
Der Garten
encounterday:25.AUG.1985
specimen day:01.MAR.1987
私は小さな庭を所有する庭師になり
静かな熱狂を育てる
庭の中央には 透明な粒子が集まり
その下に触手を閉じあわせた私のやわらかな地図が眠っている
私は自身の表土を堀り起こし
そこに また静かな呼吸と乾いた成熟を植え付ける
Die Kuh
encounterday:26.JUL.1984
specimenday:26.MAR.1987
ひっそりと視線を拾い集めて
私の感傷の眼を
ゆっくりと進んでゆくイキモノ
するりとその背にのせてゆくのは
出会うという夢をみるための
重さのない荷袋かもしれない
Homage for A.GIACOMETTI
encounterday:06.FEB.1989
specimen day:20.JUL.1989
私の勤勉な庭師の肖像
見えるがままに 自身の<視線>を植え付け
静かな熱狂に満たされている
幸福な庭師