motiv-J.B64 text

01  膨らみ続ける地中の柔らかな地図

02  満たされない熱狂を掘り起こすための

03  眠り込み/あてはまってゆくための場所を

04  感情がどこからやってくるのかを計測する

05  こくりとひやされて そして優しい温室へ

06  種子の重さは生きられる日数を決定する

07  開かれた傷口からは優しい匂いがする

08  給水塔の地下にはめこまれた真管

09  不可思議な水分がこの身をめざしてやってくる

10  庭師の白い左手は監視人との筆談のため

11  微睡して 発熱を確認する日常作業

12  火末に固定され ゆらりと浮遊するイキモノ

13  監視塔に吊りさげられた予感の形態

14  ことんと取り外され 試されるわたしのノモス

15  勤勉な歩行を続けるための磁石の音

16  監視人のまなざしが埋めこめられている地平

17  庭師の左肩にはレベルメーターの光源体

18  盲目の子犬は唯一無垢の傍観者となる

19  直角な歩行のために用いられる器具

20  地表にゆるりと刻印される種子の体液

21  骨色の台座におかれた庭師の声帯

22  時おり水血症を起こすワタクシの水晶体

23  台座の上空にはめこまれた歩行を数える器

24  優しい水/優しい水 そして呼吸する

25  水飲み場には溶けた天の模型が沈んでいる

26  降ろされてゆく透明無垢な視線の集まり  

27  背骨に位置する乾いた水滴の匂い

28  微傷した砂嵐がやってくる 夢みるために

29  観察者の小さな頭蓋骨は発声する

30  視線を停止させ ゆっくりと反応を起こす

31  流れだしてゆく熱狂を採集する尺度計を

32  監視塔の周囲には微傷したモノが堵列する

33  予熱するために東の採石場の片端に横たわる

34  出会うという予感に膨らみ続けるこのモノ

35  ゆっくりと感情をひきずる私の3本足の仔犬

36  鎖骨の上を通りすぎてゆく鉛色の言語

37  くすりと音をたてる庭師の勤勉な靴音

38  ワタクシの水飲み場にはまなざしが沈む

39  反応と感情の境界を確かめるための器

40  庭に入口にとりつけられた鍵に形態

41  表土の意識をコントロールするための右に腕

42  置き忘れてしまった自身の本影を夢想する

43  かって庭の北側に浮遊していた感情体

44  ヴィナスの言葉のために取り外された胸腺

45  庭師の膝蓋骨の裏側には翼鏡がある

46  地中のイキモノの呼吸と体温を計る

47  地中には地上よりも多くのイキモノがいて

48  きしきしと話す貝殻骨の振動を背負う

49  瞬時に発声される水飲み場の時間

50  ウツクシイ方角を探すための触手の成長点

51  慈雨の降り続くとき 庭には窮鳥が来る

52  不自由にずれてゆく回転軸を修整する

53  ヴィナスが休むための洞窟の鍵置き場

54  種子は眠りながら地中のイキモノと交感する

55  水銀晴雨計の狂いはじめた庭で

56  様々な段階で微声をひきずって歩行する

57  窮鳥のやってくる地点にはルミネッセンスがある

58  睡臥する種子には優しい水が必要

59  庭を満たすための呼吸を採集してゆく

60  そっと置かれた午後の線分を登ってゆく

61  不自由というウツクシイ形の歩行を試みる

62  あらゆる方角から地水を探るために置かれる重り

63  溶けだし そして静かな熱狂を夢みる背骨

64  地象を推測するために振動する基準器

motiv-J.B64 drawing text

J.B1986