february[ca-st]
大学の授業で捨てられた石膏の山を見たとき
私は夢中でそのかけらを拾っていました。
石膏のふくろの中に手を入れたときのひんやりととした粉の
感触は 目を閉じて一呼吸する嬉しさがあります。
さらさらと流れる様子から モノの形を写すべくしだいに
とろりとなり かたまり そして 発熱する。
発熱した石膏の表面のあたたかさは まるでイキモノの
やわらかなあたたかさのようです
雨風のために とけかかった石膏の表面から下地の麻の
繊維がのぞいて そこに石膏の欠片がこびり付いている様を
しばらく 眺めていると 壊れてゆく過程の中の優しさや
美しさを感じます
粉の状態 液体の状態 凝固した状態
いろいろな状態を目の前で楽しめる素材である石膏
モノの表面にとろりと流して そっとはずすときの
わくわくする気持ちは 子供に還ったような感触です
そのままの形が 開いたそこにある。
モノの表面の様子を素直に認識させてくれる。
型を取るという行為には なんら特別な意識の余裕を
持たなくても ただそこに モノが在るということを
確認させてくれる要素が あります
モノをならべてゆく 反復させてゆくこと
言葉を繰り返すように 呼吸を繰り返すように
そうすることで 何かが見えてくるような気がします
梱包するために テーブルに広げたエアパッキンの上に
大きなガラスをそっと置いたとき パッキンとガラスの密着した
様子がとても ウツクシク思えて しばらく その表面に
視線を植え付けたことが ありました
エアパッキンをそのまま石膏で採って
透明なカバーをかけたら どんな様子になるのかと想像
画面として大きなサイズを持ったとき
そのものは どんな風にこちらに働きかけてくるのか
眺める人は 石膏の質の表面上に
パッキンというモノの質をもう一度 想像してみるかもしれない
遠くに見える鳥の胸元をなぞってみる 虚空に指を沿わせて
そしてその質感を想像すること。 そういった訓練が
私には 大事なことです。モノの質(内と外の)を想像すること
100円で買ったバケツの蓋 以前にそれの表面を採ったことが
あります。反対向きに現れる バケツの表面の文字や絵柄が
別のモノとしての存在感をもってくる様子に
あるいは存在感が消えてゆくような表面の様子に
おもしろさを感じました
同じように石膏で採ってみたいものは いろいろあります
レゴブロックを敷きつめた表面
ブロックの正確にならんだ表面の様子は ブロックを
手にするたびに 私を楽しませてくれます
石膏という素材と
表面というテーマで次の制作をしたいと思っています