dear Petal / as a butterfly
8月 散歩する足元の草地で小さなちょうちょが
ちらちらと風にゆれているのを見つけた
眼をこらして よぉく見たら
それは 現実にあるような ないような 記号の形をした
薄葉紙の花びらだった
草のうえに散るそれらを拾い集め日本へ戻る荷物にいれた
時折 取り出してみては何かしたいと考えてきた
この記号の形で
タイプライター用紙ではさんでテキストをつけたり
箱を作って展翅をしてみたりもした
でも それだけでは眼が気持ちが満足しない
なにかしらもっと先のことがあるように思えて
そのままこの記号を雲形定規にしてそっとなぞってみた
何度もその儚い形をなぞり 重ね合わせてゆくうちに
いろいろなオハナシが現れる
ほんの僅かな重なりや差異によって
世界は幾通りにもうまれ
わたしのまなざしを満たしてくれる
今でも わたしは
くりかえし
くりかえし
その形をなぞっている