coral-collage-collection

ERNST HAECKEL(1834-1919) は 19世紀のドイツにおける 進化論者であり 科学者であり
そして 博物画家でもあります
系統樹の創案をはじめとして
多数の生物学上の成果をあげました


HAECKELの生物スケッチの才能を発揮した<Kunstformen der Natur1899-1904>には
<自然の美的技巧>という訳がついています


この図鑑を知った頃は 出会った珊瑚のスケッチをしていたり 言葉の配列を楽しんでいた私は
スタンプを作ることにも夢中になっていました
スタンプは イメージを反復させるのにとても手軽な手段であること
その質素な緊張感を楽しむことが私にはとても好ましく思えました


そして このHAECKELの図鑑の珊瑚類のページをながめていて
<coral-collage-collection>というタイトルを思いつき
それに沿った なにかしらのカタチを作りたいと思ったのは1989年のことでした


HAECKELの図版をひとつずつ 角材で台をつけたスタンプにして
拾った紙の箱に仕切りをつけて そこに図鑑のように並べました
そうして イメージの断片を紙の上に増幅させてゆきました
その過程で当然のように紙の上には名前を持つ者や場所があらわれてきました
時間のない王宮に住む人たち
重さのない液の中に 眠っている器官たち


ドコカラ ヤッテキタノ?  ドコニカクレテイタノ?


そう 話しかけたくなるような作業だったことを覚えています


自分の作りあげたイメージではないモノから 触発されるという悦びを初めて感じたように思います


そして 気付いたこと オリジナルなイメージというものはどこにもないのです
作品に求められる表面的なオリジナルという概念が 私は好きではありません


すべては 必ずどこかに用意されていて
そこにむけるべき まなざしを持っているかどうかが重要なことであると思うのです

郵送シリーズのためのテキスト 1998.11月